認知症について
アルツハイマー病とは
アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)は記憶などの認知機能に障害をきたす神経変性型の認知症で、高齢化社会において最も問題視されている疾患でありながら、その発症原因はまだ明らかになっていません。脳内βアミロイド集積(老人斑)や神経原線維変化などの特徴的な病理学的変化が見られますが、その診断は死後脳の病理所見を診ないと確定しません。臨床的には行動評価テストや心理テストの結果を含めて総合的に診断されますが、現在の診断基準では早期に診断を下すことが難しいのみならず、他の様々な種類の認知症とADを区別する客観的指標がないため、その鑑別に困難を伴うこともあります。
アルツハイマー病患者の脳病理

老人斑

神経原繊維変化
ADの罹病期間は5年から20年といわれますが、主症状である認知機能障害は徐々に進行するため、症状の出ていない超早期に診断ができればその後の治療やケアに有効と考えられます。そこで我々のグループでは分子イメージング技術を利用して、ADの超早期診断法開発や新しい治療法の評価を試みています。
臨床研究では、認知症の患者さんやまだ認知症には至っていない軽度認知障害(MCI, Mild Cognitive
Impairment)の患者さんを対象にβアミロイド沈着をPETにより画像化し、これによって認知症を発症前に診断したり、病気の進行を客観的に捉えたりできるかどうかを検討しています。
PETによる高齢者のβアミロイド集積画像

正常高齢者
(集積なし)

軽度認知障害
(集積あり)

アルツハイマー病患者
(顕著な集積)
また動物実験では、認知症の病理モデルとなるマウスを使って、アミロイド沈着やそれに関連して増殖する活性化グリア細胞の時間的推移を様々なイメージングツールを駆使して画像化し、早期診断にさらに有効な分子プローブの開発やβアミロイド抑制のための治療法の評価を行っています。
PETによるマウスのβアミロイド集積画像

野生型老齢マウス
(集積なし)

アルツハイマー病
モデルマウス
(顕著な集積)

片側を治療した
モデルマウス
(治療側で集積減少)