研究室リンク
専門分野
解剖学、医用マススペクトル、量子生命科学、老化と老化関連疾患、翻訳後修飾
研究概要
分担項目「グリア細胞を活かした薬剤による細胞若返りや老化促進因子のブロックによる疾患予防の開発」を主導しています。
私たちは、質量分析を中核技術として、神経変性疾患の発症・進展に関わる分子基盤の解明と、それに基づく創薬および診断技術の創出を目指した研究を推進しています。ムーンショット型研究開発事業においては、脳内で進行する異常タンパク質病変、炎症反応、細胞老化が相互に影響し合う病態を、分子レベルで正確に捉える役割を担っています。
アルツハイマー病、パーキンソン病、多系統萎縮症などの神経変性疾患では、タウやαシヌクレインに代表される異常タンパク質が凝集・蓄積し、神経回路内を伝播することで病態が進行します。本研究は、これらの病理過程を既存マーカーや仮説に依存せず、質量分析によって直接同定・解析する点に特徴があります。
研究成果は、神経変性疾患の超早期診断バイオマーカーの開発に加え、ミクログリア機能の制御を基盤とした治療薬の創出へと展開されることが期待されます。私たちは、質量分析を基盤とした分子科学と創薬研究を橋渡しすることで、次世代の神経変性疾患治療の実現に貢献していきます。
主な研究内容
質量分析により得られる分子実体情報を基盤として、PET を用いた脳内画像化研究や薬効評価研究と連携します。これにより、候補化合物がミクログリア機能や病態分子ネットワークに及ぼす影響を多角的に評価し、診断と治療を統合した創薬研究の推進に貢献します。
質量分析イメージングを用いた病態分子の空間解析
質量分析イメージング(MALDI、DESIなど)を用いて、脳組織内に存在するタンパク質、ペプチド、脂質の分布を高解像度で可視化しています。この手法により、従来の免疫染色では捉えきれなかった病態関連分子や、病変周囲に形成される分子ネットワークの全体像を明らかにしています。
異常タンパク質凝集体の分子実体解析と創薬標的探索
網羅的プロテオミクスおよび相互作用解析を通じて、異常タンパク質凝集体を構成する分子や翻訳後修飾を解析しています。これにより、疾患特異的な分子形態や病態進行に関与する分子群を同定し、創薬標的探索の基盤情報として活用しています。
ミクログリアによる異常タンパク質認識・クリアランス機構の解析
神経変性疾患の進行には、ミクログリアを中心としたグリア細胞の機能変化が深く関与^しています。本研究では、ミクログリアが異常タンパク質をどのように認識し、取り込み、分解あるいは伝播に関与するのかを、質量分析を用いた分子プロファイリングにより解析しています。
UBL3を介した膜輸送・エクソソーム機構と創薬コンセプト
私たちは、ユビキチン様タンパク質 UBL3 に着目し、膜輸送やエクソソームを介したタンパク質動態制御機構を明らかにしてきました。異常タンパク質の細胞外排出やマイクログリアによる回収・分解過程を、質量分析を用いて定量的に評価することで、病態進行を制御する新たな創薬コンセプトの構築を進めています。
主な論文業績
Yan J, Kahyo T, Zhang H, Ping Y, Zhang C, Jiang S, Ji Q, Ferdous R, Islam MS, Oyama S, Aramaki S, Sato T, Mimi MA, Hasan MM, Setou M. Alpha-synuclein interaction with UBL3 is upregulated by microsomal glutathione S-transferase 3, leading to increased extracellular transport of the alpha-synuclein under oxidative stress. Int J Mol Sci 2024 25(13):7353. doi: 10.3390/ijms25137353
Yan J, Zhang H, Tomochika Y, Chen B, Ping Y, Islam MS, Aramaki S, Sato T, Nagashima Y, Nakamura T, Kahyo T, Kaneda D, Ogawa K, Yoshida M, Setou M. UBL3 interaction with α-synuclein is downregulated by silencing MGST3. Biomedicines 2023,11(9):2491. doi: 10.3390/biomedicines11092491
Chen B, Hasan MM, Zhang H, Zhai Q, Waliullah ASM, Ping Y, Zhang C, Oyama S, Mimi MA, Tomochika Y, Nagashima Y, Nakamura T, Kahyo T, Ogawa K, Kaneda D, Yoshida M, Setou M. UBL3 interacts with α-synuclein in cells and the interaction is downregulated by the EGFR pathway inhibitor Osimertinib. Biomedicines 2023,11(6):1685. doi: 10.3390/biomedicines11061685
Ageta H, Ageta-Ishihara N, Hitachi K, Karayel O, Onouchi T, Yamaguchi H, Kahyo T, Hatanaka K, Ikegami K, Yoshioka Y, Nakamura K, Kosaka N, Nakatani M, Uezumi A, Ide T, Tsutsumi Y, Sugimura H, Kinoshita M, Ochiya T, Mann M, Setou M, Tsuchida K, UBL3 modification influences protein sorting to small extracellular vesicles. Nat Commun 2018, 9(1), 3936. doi: 10.3390/neurolint16060089
Phua SC, Chiba S, Suzuki M, Su E, Elle RC, Ganesh PV, Setou M, Rohatgi R, Jeremy RF, Ikegami K, Inoue T. Dynamic remodeling of membrane composition drives cell cycle through primary cilia excision. Cell 2017, 168:1-2:264-279. doi: 10.1016/j.cell.2016.12.032


